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N-ブロモ化合物

アルケンへの付加反応を起こしやすい臭素化剤、N-ブロモアセトアミド(NBA)の概要と反応機構:N-ブロモ化合物⑩:臭素化・ヨウ素化反応解説シリーズ 10

医薬品や農薬、半導体材料などの分野では、さまざまな臭素化物が中間体として活躍しています。この臭素化物をつくる際に必要不可欠なのが、N-ブロモ化合物などの臭素化剤です。

「臭素化剤として使用されるN-ブロモ化合物」と聞いてみなさんが最初に思い浮かべるのは、N-ブロモスクシンイミド(NBS)や1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(DBDMH)ではないでしょうか。実は、世の中にはこれらとは一風変わった反応性を示す臭素化剤が存在します。その名は、「N-ブロモアセトアミド(NBA)」。

NBAの特徴は、アルケンの二重結合への臭素付加反応を起こしやすい点です。置換生成物ではなく付加生成物を優先的に得たい場合には、NBSやDBDMHよりもNBAが適しています。使いどころによっては、反応の難易度をぐっと下げてくれる場合もあるでしょう。

今回は、NBAの特徴や取り扱い時の注意点、NBAを使用した臭素化反応などを解説します。本記事の内容を参考にして、NBAを効果的に活用してください。

N-ブロモアセトアミド(NBA)とは

付加反応を起こしやすい臭素化剤

N-ブロモアセトアミド(NBA)は白~微黄色の固体で、融点は102~105℃。水やTHFに可溶、ヘキサンやエーテルには難溶の化合物です。アルケンのブロモヒドリン化やアルコールの酸化などに利用されます。

NBAによる臭素化反応の特徴は、代表的な臭素化剤であるN-ブロモスクシンイミド(NBS)とは異なり、置換反応よりも付加反応が優先しやすい点です。アリル位を臭素化する傾向はほとんど見られません。付加反応の詳細は後述します。

NBAの調製方法と注意点

NBAは、水酸化アルカリ水溶液中でアセトアミドへ臭素を作用させる方法で、容易に調製できます。しかし、冷暗所に保存しておいても徐々に分解してしまうため、調製した試薬はすぐに使い切る必要があります。

NBAを扱う際の注意点

NBAを還元剤と接触させたり可燃物と混合したりすると、発火や爆発の危険があります。また、NBAは皮膚や粘膜を強く刺激するため、安易に触れないよう気をつけないといけません。

NBAを使用した臭素化反応:アルケンへの臭素付加

反応の詳細

NBA中の窒素原子は、電子求引性のカルボニル基と隣接しています。そのため、NBA中の臭素原子は正に分極しており、電子が豊富な化合物に対して求電子的に作用します。このような原理で、NBA中の臭素原子がアルケンの二重結合に付加するのです(求電子付加反応)。

NBAを用いた臭素化反応は、臭素原子上に正電荷をもつ3員環のブロモニウムイオン中間体(元の二重結合における2つの炭素原子に臭素が橋かけした構造)を経由するイオン機構で進行します。

最初にNBAの求電子攻撃によりブロモニウムイオンが生成された後、求核剤がブロモニウムイオン中の炭素原子を攻撃します。求核剤は臭素の反対側から攻撃するため、通常は1,2-trans配置の付加体が得られます。

使用する求核剤に応じて、さまざまな生成物が得られる

NBAによるアルケンの臭素付加反応では、使用する求核剤によって異なる生成物が得られます。例えば、求核剤が水の場合はブロモヒドリン(ブロモアルコール)、求核剤がアルコールの場合はブロモヒドリンのエーテルが生じます。以下は、メタノールを求核剤としてエーテルを生成する反応です。

また、カルボン酸を溶媒とした場合はエステルが生成され、異種のハロゲンイオンを共存させた場合は混合型のジハロアルカンが生成します。それぞれの反応例は以下のとおりです。

※ 1-ブロモ-2-フルオロヘキサンと2-ブロモ-1-フルオロヘキサンの95:5混合物として得られた。

ブロモアミノ化も可能

NBAを使えば、アルケンのブロモアミノ化も可能です。Chenらは、K3PO4を触媒としたβ-ニトロスチレン誘導体のブロモアミノ化反応について報告しています5)。反応例は以下のとおりです。

NBAは酸化剤としても使用される

N-ブロモ化合物は、臭素化剤だけではなく酸化剤としても利用されます。NBAも例外ではありません。

例えば、NBAによるケトンやD-アラビノース、マンノースの酸化反応が報告されています6)7)。また、ルテニウム(III)触媒を使用したエチレングリコールとグリセロールの酸化反応も研究されています8)。

NBAを臭素化剤として使用したい場合は、望ましくない酸化反応が起こらないように反応条件を検討する必要があります。

マナックは、代表的なN-ブロモ化合物であるNBSおよびDBDMHを製造・販売しています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

1) 鈴木仁美 監修、マナック(株)研究所 著、「臭素およびヨウ素化合物の有機合成 試薬と合成法」、丸善出版
2) Winstein, S., Ingraham, L. L. J. Am. Chem. Soc., 1952, 74, 1160.
3) Schmidt, E., von Knilling, W. et al. Chem. Ber., 1926, 59, 1279.
4) Pattison, F. L. M., Peters, D. A. V. et al. Can. J. Chem., 1965, 43, 1689.
5) Chen, Z. G., Wang, Y. et al. J. Org. Chem., 2010, 75, 2085.
6) Singh, B., Srivastava, R. Tetrahedron, 1986, 42, 2749
7) Singh, A. K., Srivastava, J., Rahmani, S. J. Mol. Catal. A Chem., 2007, 271, 151.
8) Singh, B., Singh, D., Singh, A. K. Int. J. Chem. Kinet., 1988, 20, 501

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