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スタッフストーリー

女性が目立たない化学業界の中で… マナック上海で初の女性社長が生まれるまで

マナックには中国・上海に子会社「曼奈科(上海)貿易有限公司」(マナック上海)があります。2022年10月、総経理(経営を主管する役割、日本で言えば社長)に山下美保さんが就任しました。日本の化学品メーカーで総経理を女性が務めるのはとてもめずらしいことです。

山下さんはマナックのグローバル展開を見据え、「商社ビジネス」の強化をめざしています。どのような経緯で山下さんがマナック上海を率いるようになったのでしょうか。

女性管理職は現在3名のみ

山下さんは、転職をきっかけに上京しました。当時派遣社員を企業に紹介する営業をしていましたが、毎日が残業続きで終電ぎりぎりの生活でした。

そんな中、取引先だったマナックから誘いを受けて2002年3月に総合職として入社しました。

入社当時、東京支店(現本社)で働く社員は約10人で、うち女性は2人。化学業界は、いまほど女性が働きやすい環境ではなく、事務職の方が多くをしめていました。山下さんは「当時化学業界で営業職の女性をひとりも見たことがありませんでした」と振り返ります。

でも、“自分なりに仕事を改革していく”という信念が山下さんの支えになりました。当時の営業担当者は出張先からでも社内外の全ての調整をしていました。営業アシスタントだった山下さんは可能な範囲で社内外の調整やデリバリー業務を一手に引き受けることで、営業担当者が“営業活動に専念できる環境作り”に注力したといいます。

「ミスをして営業担当者や工場の方に迷惑をかけたこともあり、心が折れそうになったこともありましたが、皆さん、怒らずにフォローしてくれました。厳しい先輩や上司の後ろ姿を見て育ってきた世代なので、信頼をリカバリーするためにミスから学んだことを生かそうと……。私の取り柄はガッツがあることですかね」

医薬品営業はゼロスタート

2015年、営業アシスタントとして仕事の幅を広げていた山下さんに転機が訪れました。新しくジェネリック医薬品を輸入販売する部署が立ち上がったのです。

マナックは医薬の“中間体メーカー”としては業界に参入していましたが、ジェネリック医薬品の輸入販売という“商社ポジション”のフィールドは未開拓でした。医薬品の輸入販売には、煩雑な手続きや多くのレギュレーション対応が存在します。 

新たな部署は、マスターファイル(原薬等登録原簿、MF)の国内管理人として、お客様に海外品を紹介するとともに、日本における薬事申請を行い、年々厳しくなっているレギュレーション対応に備えサプライヤーを指導・調整する役目を担うことになりました。

「ジェネリックの担当者は誰にするか」

新部署の立ち上げ時に入社した部長から、「山下さんがいいのでは」と指名がありました。

これに一番驚いたのは山下さんでした。

「大学時代の専攻は物理で、化学はまったくの専門外でした。年々レギュレーション対応が厳しくなっている医薬品の領域で、知識ゼロの私が対応できるのかと躊躇(ちゅうちょ)しました」

しかし同時に「トライする前からあきらめてはいけない」いう気持ちが芽生えたと山下さんは言います。周りに背中を押され、知識ゼロの状態でジェネリック医薬品から、営業キャリアをスタートさせることになりました。

メーカー知識を生かす商社ビジネス

ファインケミカルの主力製品は、原料を最終製品にする過程に使用される中間体です。マナックは製薬会社や原薬メーカーからの受託品が多いため、自社製品が少ないという課題がありました。

山下さんは以前から、受託品だけに頼るビジネスモデルに限界を感じていました。「新しい部署の仕事は、医薬品用途で得た知識を生かして、 “商社ポジション”へビジネスを拡大していく、マナックにとって新しい分野へのチャレンジだと感じていました」

こうして始まった新規事業でしたが、すでに厚生労働省が目標として掲げたジェネリック医薬品の普及率80%の達成は目前の状態で、専門商社も飽和状態だったため、「期待通りの成果を出せなかった」と山下さんは言います。

また、国内外で「マナックがジェネリック事業を立ち上げた」というプレゼンスが低かったこともあり、2021年3月にジェネリック部門は縮小され、ファインケミカル事業部に吸収されました。

それでも山下さんは、会社を成長させるための投資として、“商社ビジネス”の可能性をあきらめていませんでした。

「医薬品はライフサイエンスの一部として化学で社会に貢献できる(SDGs)分野である一方で、参入のハードルが非常に高い。需要量と供給量がめまぐるしく変動する電子材料や半導体材料に比べて、一度採用されれば安定事業となります。マナックが持つメーカーとしての優位性を商社ビジネスに生かしたいと考えていました」

晴天の霹靂だった上海行き

ジェネリック部門が縮小したあと、山下さんは海外営業も兼任することになりました。

「メーカー営業として、医薬品用途をメインとした輸出案件の担当とヨウ素化合物を製造する合弁会社との調整担当になりました。私はいつも知識ゼロベースからの挑戦なんです」と笑う山下さんに、またも大きな転機が訪れます。

社長(当時常務)に呼び出された山下さんは、「マナック上海の次の総経理としてあなたの名前が挙がっている」と告げられました。

当時、山下さんは月に1~2回は中国出張していて、現地スタッフとも面識がありました。しかし、中国語は全く話せず、管理系の仕事の経験はゼロ、日本ではプレイングマネージャーで部下はいませんでした。

「青天の霹靂(へきれき)でした。不安はありましたが、会長も推薦してくれていると聞き、期待されていることが嬉しかったです。海外拠点の総経理として挑戦することは、会社のダイバーシティ化を進めて女性社員が活躍できる環境作りのためにもなる。これはもう“トライするしかない”と覚悟を決めました」

2022年10月、コロナウイルス感染拡大によるロックダウンが解除され、山下さんは上海へ向かいました。

「正直、まだまだ化学業界は男性優位だと感じています。だからこそ、私が先陣をきることで、後に続く女性社員たちがステップアップしやすい環境づくりに役立ちたいと思っています。“山下にできるなら、自分にだってできる”と言ってくれるような社員が増えるように、マナック上海で挑戦したいと思いました」

さてその挑戦は順調に進むのでしょうか――。(次の記事に続きます)

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