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技術・特許

臭素化・ヨウ素化反応解説シリーズ:N-ブロモ化合物②:
臭素化剤の第一選択、N-ブロモスクシンイミド(NBS)とは

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マナックが得意とする、臭素化・ヨウ素化反応について解説する本シリーズ。今回は、臭素化剤「N-ブロモ化合物」の中でも最もよく使用される、「N-ブロモスクシンイミド(N-Bromosuccinimide、NBS)」を取り上げます。

実験室などで、臭素化剤の第一選択として用いられることが多いNBS。「使用した経験はあるけれど、くわしい性質や取り扱い方法までは知らない」という方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、NBSの特徴や取り扱い時の注意点、NBSを使用した臭素化反応の概要などをご紹介します。NBSをより効果的かつ安全に活用するため、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

N-ブロモスクシンイミド(NBS)とは

取り扱いが容易で、非常によく使用される臭素化剤

NBSは弱い臭素臭をもつ白~微黄色の結晶性粉末で、融点は173~176℃(分解)。アセトン、THF、DMF、アセトニトリル、DMSOなどに可溶で、水や酢酸には微溶、ヘキサンや四塩化炭素には難溶の化合物です。

粉末状で、臭素(液体)と比べて取り扱いが容易なため、有機合成では臭素化剤の第一選択としてよく使用されます。乾いた冷暗所で長期的に保存でき、値段も比較的安価です。

工業用の薬品は、純度98~99%の国産品をマナックから購入できます。

NBSを取り扱う際の注意点
NBSは、通常の条件下では安全に扱えますが、急激な加熱、衝撃、摩擦があると爆発的に分解することがあります。また、取り扱いの際は、NBSが眼や皮膚、粘膜に触れないように注意してください。眼に入ると失明する危険性がありますし、皮膚に触れるとかぶれる場合もあります。

NBSを使用する際には、防じんマスク、保護メガネ、ゴム手袋などを着用しましょう。

NBSを使用した臭素化反応
どのような臭素化反応に使用されるか
NBSは、以下の臭素化反応に用いられます。特に、Wohl-Ziegler反応試薬としては古くから有名です。

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・アリル位およびベンジル位の臭素化(Wohl-Ziegler反応)
・活性芳香環の臭素化
・不活性芳香環の臭素化
・アルケンの臭素付加やブロモヒドリン化
・アルコールからブロモアルカンの合成
・カルボニル基のα位の臭素化
・カルボン酸と関連化合物の臭素化
・プロパルギルアルコールからブロモアレンの合成
・芳香環のオルト選択的な臭素化
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臭素化反応の終了後には、大量のスクシンイミドが残ります。スクシンイミドは、四塩化炭素に難溶で液面に浮上するため、容易に分離が可能です。また、四塩化炭素のほか、シクロヘキサンやベンゼンも反応溶媒として使用できます。

臭素化の位置は反応条件に応じて変化します。例えば、四塩化炭素の代わりにニトロメタンやテトラクロロエタンなどの極性溶媒を用いると、炭素-炭素二重結合への臭素付加が起こりやすくなるのです。近年では、四塩化炭素が健康や環境に及ぼす危険性が強く懸念されており、代替の反応溶媒として、酢酸メチル2)やベンゾトリフルオリド3)の使用も提案されています。

実はNBSは、臭素化反応のほか、ヒドロ芳香族化合物の脱水素・酸化や、ペプチド結合の切断などにも幅広く用いられます。写真用のかぶり防止剤として研究された例もあるようです。

NBSを用いて臭素化反応を行う際の注意点
臭素化反応の進行が遅い場合には、過酸化ベンゾイル(BPO)やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の添加、光照射などが有効です。しかしこれにより、急激な発熱をともなって爆発的に反応が始まる場合もあります。大規模な合成反応を行う際には注意が必要です。

【マナックこぼれ話】NBSは、本当は「薄い黄色」ではない?

化学者であれば、一度は使ったことがあるNBS。その外観は「薄い黄色」だと思われている方がほとんどではないでしょうか。実は、この黄色はNBSから発生した遊離臭素の色なのです。購入してから時間が経過したNBSには、このように遊離臭素が含まれています。

黄色味がかったNBSは、加熱した酢酸または熱水に溶かして放冷し、析出した結晶を集めて乾燥させれば精製できます。保存は冷暗所が最適です(金属容器に保存してはいけません)。

古くなったNBSに含まれる遊離臭素は微量であり、臭素化反応の選択性に大きな影響を及ぼすことは考えにくいですが、精密な臭素化反応を行いたい場合はNBSの購入時期にも気を配った方がいいでしょう。

マナックは、代表的なN-ブロモ化合物であるNBSおよびDBDMHを製造・販売しています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

参考文献
1) 鈴木仁美 監修、マナック(株)研究所 著、「臭素およびヨウ素化合物の有機合成 試薬と合成法」、丸善出版
2) Amijs, C. H. M., van Klink, G. P. M. et al. Green Chem., 2003, 5, 470.
3) Suarez, D., Laval, G. et al. Synthesis, 2009, 1807.
4) 富士写真フィルム(株), Ger. Offen. 2, 326, 865(1973)