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スタッフストーリー

半導体を進化させる自社製品を! 研究×営業で成し遂げた次世代レジスト関連原料「TIP」の開発

【CAS No.】609-23-4
【化学名】2,4,6-トリヨードフェノール
【化学式】C6H3I3O

電気を用いるほぼ全ての製品に使われている、半導体。昨今のトレンドである生成AIや脱炭素の分野でも半導体は重要な役割を果たし、その高性能化・微細化を推し進めるために世界中で研究開発が進められています。

このような状況で重要なのが、半導体製造に必要な物資の確保です。最先端の半導体には従来とは異なる原料が必要になる場合もあるため、その確保に向けて多くの企業が動き始めています。

マナックは、最先端の半導体に不可欠なヨウ素化合物「TIP」を自社製品として販売しています。その立役者が、東京で「TIP」の営業を担当している山崎孝浩さんです。

期待の自社製品である「TIP」はどのように生まれたのでしょうか。そして、マナックはどのような戦略で半導体業界に挑もうとしているのでしょうか。山崎さんに話を聞きました。

研究と営業を行き来した経験を生かし、自社製品の開発に挑む

山崎さんは現在、マナックでファインケミカル製品の営業を担当しています。営業というと文系のイメージを持つ人が多いかもしれませんが、実は山崎さんは理系出身の研究者。入社当初は、マナックの福山工場で研究開発に携わっていました。

山崎さん

「入社後は2年間ほど研究開発に従事した後、東京で3年間営業を担当しました。その後、福山工場に戻って10年ほど研究を担当し、2022年にまた営業として東京に戻ったんです。社内でも珍しいキャリアですね」と山崎さん。「研究者としての視点を持って営業活動をしていると、お客さまの技術的な課題や要望を深く理解できます。それが、お客さまの信頼につながっていると感じます」(山崎さん)

マナックのファインケミカル事業部はこれまで、お客さまが要求する製品をつくる「受託開発」に力を入れてきました。そのため、山崎さんが営業として携わってきた案件も受託開発が多かったと言います。

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ただ山崎さんは受託開発の重要性を意識しつつ、ここで得た知見をさらに自社製品の開発・営業に積極的に取り入れていきたいと語ります。

「受託開発と自社製品は、営業や研究の流れが少し異なります。例えば、受託開発は特定顧客の課題を解決する『サービス』であり、その結果生まれた製品を他社に売ることはありません。一方で自社製品の場合は、自分たちで製品の仕様を決め、売り先を見つける必要がありますが、いきなりゼロから自社製品を開発することは至難の業です。ですので受託開発で得た知見を、自社製品の開発・営業に取り込むことで営業担当や研究者の活躍の場や思考の幅が広がり、またそこで広がったお客さまからの受託開発を受けることができれば、「受託製品⇒自社製品⇒受託製品…」というサイクルがうまく転がり、会社も成長するのではないかと思っています。今後は、研究と営業の両視点を持ってこれまで以上に自社製品の開発と営業にも力を入れていきたいと考えています」(山崎さん)

マナック肝いりの自社製品。半導体業界が注目する「TIP」とは

山崎さんが最近力を入れて営業しているのが、マナック肝いりの自社製品「TIP」です。TIPは「2,4,6-Triiodophenol(2,4,6-トリヨードフェノール)」の略で、フェノールに3つのヨウ素原子が結合した、非常にシンプルな構造をしています。

TIPのようにシンプルな分子は、大きくて複雑な分子をつくるための「パーツ」として使われます。TIPを他の分子と結合させることで、さまざまな化合物が作り出されるのです。TIPは現在、医薬品や電子材料といった多くの分野で「パーツ」として活躍しています。

そんなTIPの新たな用途として注目されているのが、半導体の製造に必要な感光性材料「レジスト」の関連原料としての活用です。TIPを使ったレジストは「非常に微細な回路を持つ最先端半導体」の製造に使えるため、TIPは半導体業界の進化を担う重要な物質だと言われています。

TIPの特徴や用途をより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

失敗にくじけず、「高品質・低コスト」なTIPの開発に成功!

マナックのTIP開発は、2022年に山崎さんが顧客から受けた相談がきっかけで始まりました。

「そのお客さまは、『高品質のTIPを販売しているメーカーがない』と困っていました。当時、TIPは最先端半導体向けのレジスト関連原料として有望視されていて、その他の分野でも広く使われる可能性がありました。そのため、マナックで高品質なTIPを開発できないか検討を始めました」(山崎さん)

しかし、開発は予想以上に難航します。最初に開発したTIPはお客さまからの品質などの要求に届かず、製品化が見送られてしまいました。

「ここで一度、この案件はペンディングとなりました。でも用途としては有望だと思っていたので、次にチャンスが来た時には確実にモノにできるよう、研究部門と連携して失敗の原因を徹底的に分析し、溶媒や加熱温度、精製方法、ヨウ素化剤などのあらゆる条件を見直すことにしたんです。途中で何度もあきらめそうになりましたが、何とか持ち直して検討を続けました」

そんな苦労の末、高品質なTIPを低コストで製造することに成功。半導体分野にも問題なく使える「純度99%超の自信作」が誕生しました。

この高品質・低コストなTIPは現在、半導体分野を含む多くの顧客にサンプルとして提供され、評価が進められています。「こうしている間も、半導体関連企業からのTIPの問い合わせは徐々に増えています。次世代のレジスト関連原料としてTIPが注目されているのを肌で感じます」。

TIPの原料であるヨウ素を安定的に調達できる点も、マナックの強みです。世界的なヨウ素の供給不足が続く中でも、関連会社と連携して、低コスト・高純度なTIPの製造を継続できる環境を整えております。これは、TIPの製造における大きなメリットです。

「お客さまが欲しいときに、欲しい量のTIPを提供できる。このような盤石な製造体制を築いているからこそ、自社製品として自信を持って営業できます」

受託開発と自社製品の両輪で、半導体業界に貢献したい

TIPがターゲットとするレジスト分野では、受託開発のニーズも多いと山崎さんは語ります。

「レジスト分野の顧客からは、TIPのように“パーツ”として使えるシンプルな化合物ではなく、より複雑な化合物が欲しいという話も聞きます。このような化合物は、顧客と仕様を擦り合わせる受託開発でないと製造できません。つまり、レジスト業界の顧客のニーズを満足させるには、自社製品と受託開発の両方が必須なのです。マナックは、これらの両輪でレジスト業界に貢献したいと考えています」

研究で得た知見を生かしてマナックの営業をリードし、半導体の進化に貢献する。山崎さんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

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