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スタッフストーリー

「The 営業パーソン」が見据えるマナックの海外戦略とは

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マナックは上海に子会社があります。「曼奈科(上海)貿易有限公司」、通称マナック上海です。この子会社の創業当初である約7年前から上海に派遣され、最後は総経理(社長)を務めた小土井文生(こどい・ふみお)さん(=冒頭の写真)が帰国し、マナック本社で仕事を始めています。小土井さんに対する会社からのミッションは「海外販売を拡大せよ」。
直接海外へ販売している比率がまだ10%に満たないマナックにとって、成長していく上で海外販売比率アップが重要なことは間違いありません。今後、マナックの海外戦略はどう変わっていくのでしょうか。小土井さんに話を聞きました。

スーツのポケットにスマホ3台…

掲載する記事の写真を撮影するときのこと。スーツのポケットの辺りが膨らんでいるので、ポケットの中のものを出すようお願いしたところ、出るわ出るわ。スマホ3台、ボールペン4本、メモ帳……。

「あ、スマホは会社用と個人用と海外用です」。ボールペン4本のうち1本はグリップ部分のメッキがはがれ落ちている……。「あ、これ、お世話になった方にいただいたものでして。ボロボロになっちゃったんですが、書きやすいし愛着があって、手放せないんですよ」。

人と人のつながりを大切にする「The 営業パーソン」。そんな小土井さんの日本に戻ってからの肩書は「海外事業推進部 部長」です。

会社からは「中国での経験を生かして、小土井君のスタイルで新しい海外販売の形をつくってほしい」と言われたといいます。

約7年間の中国生活は山あり谷あり

開発途上だったころの中国は、人件費が安いことから多くの国のメーカーが中国に工場をつくり、「世界の工場」と言われていました。しかし、小土井さんが中国に赴任した2016年ころから、中国は世界中の製品・商品を大量消費する「世界の市場」に姿を変えていきました。

マナックにとって初の海外拠点となったマナック上海のミッションは、中国を含む海外事業の拡大、新規ビジネス開拓ですが、設立当初はグループの南京工場でつくる製品の日本への販売も重要な役割でした。マナック上海の売り上げは順調に伸びていましたが、2018年にその工場が中国企業に売却されることになりました。小土井さんは当時をこう振り返ります。

「売るものがなくなって目の前が真っ暗になりました。現地スタッフといろいろ議論して、マナックがつくる難燃材料関連製品を売るために、営業しまくることにしました」

しかし、「中国人から信頼されるのは時間がかかる」(小土井さん)ものです。ただラッキーなことに、2016年から話を始めた営業先がそのころちょうど、芽吹き始める時期と重なり合いました。

別の追い風もありました。中国には多くの化学メーカーが存在していますが、ずさんな生産管理、廃液処理をする会社も当時多く存在していました。そういった会社に対して中国政府が法規制を強めたことで、生産コストが上昇したり、生産停止となったりする会社が続出しました。さらに政府が化学工業団地の新設を見合わせたため新規参入する会社が少なくなりました。マナック上海が販売を始めようとした難燃剤は、家電製品などに多く使われるもので、中国メーカーも生産していました。しかし、生産コストの上昇や倒産などによってライバルが少なくなったのです。

「マナックの難燃剤は、川下ユーザーであるコンパウンダーが樹脂に練り込んで難燃コンパウンドとなりますが、高品質で安定していることが売りです。価格も現地品と比べると割高です。中国人の所得が上がり、品質の良い家電製品の需要も伸びていたので、マナックがつくる高付加価値の製品も需要が出始めました」(小土井さん)

マナック上海の営業メンバーが一時のどん底から這い上がり、グループの業績に貢献するまでには、そう長い時間はかかりませんでした。

いまも注視する中国の動向

小土井さんは日本に戻ったいまも、「世界の市場」である中国の動向は注視していると言います。「中国では今後どんどん新たな需要が出てくる」としたうえで、小土井さんは今後売れそうなものの一つとしてポリイミドモノマーを挙げました。スマホやPC、電気自動車(EV)に使われる電子材料です。

ポリイミドモノマーTAHQとは

「中国の1年間の新車販売台数は2600万台で、4分の1がEVです。この台数は日本全体のEV台数より多いんです。中国のEVメーカーは世界販売を考えていますから、当然ポリイミドモノマーの需要は高まるはずです」(小土井さん)

医薬系はEU、米国は電子部品系も狙える

マナックが今後力を入れていく医薬品原薬・中間体はEU諸国と米国で販売したい、と小土井さんは考えています。マナックはいままでEU圏での販売についてはパートナー企業に営業を代行してもらう形で進めていましたが、ここ数年EU圏で新規取引の実績がありません。小土井さんは、EUにマナック自前の販売拠点を置いたほうがいいか、いま調査しています。

「結論はまだ出ていません。ただ、マナック製品の特徴、技術、サービスなどの良さを理解してもらえたら、需要は必ずあると思っています。最初はヨードベンゼンやp-ヨードトルエンなど、シンプルなヨウ素化物や臭素化物などのファインケミカル製品の販売になるかもしれませんが、製品を売るだけでなく、マナックの技術力をアピールして受託生産の契約数も増やしたいと考えているので、あらゆる方策を検討していきます」と小土井さんは話します。

米国は医薬関連に加えて電子材料もイケるはず、インド市場もどんどん大きくなる……小土井さんに課せられた海外販売の拡大は、マナック成長の大きなカギのひとつです。人と人のつながりを大切にし、未知の地の営業にも挑戦できる小土井さんの腕の見せどころなのかもしれません。

デカップリング下でも全方位で

一方で、米国と中国の対立で経済的な分断(デカップリング)が起き、地政学リスクは高まりつつあるなか、日本企業の海外との付き合い方は難しさを増しています。

「中国は最大の市場であることは間違いありません。避けて通れないということです。他のアジア諸国やインドとの付き合い方は、未知なことが多いのも事実です。ただ、何もしないわけにはいきません。リスクは認識しつつも大胆に、全方位で海外戦略を立てて、グループの海外販売を倍増させたいと思っています」

会社からのプレッシャーもかかるなか、「The 営業パーソン」の構想は際限なく広がっていきます。

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