アイデアマンが先導する「交差汚染防止」と「IT化」/ファインケミカル生産能力増強プロジェクト
2021年春、マナックのファインケミカル生産ラインに新たな反応設備が導入されました。これは、マナックが時代の流れに合わせて生き残るために計画した設備改修プロジェクトの成果です。
本プロジェクトでは、「交差汚染防止」と「IT化」の取り組みも進められました。
今回、プロジェクトの責任者である、福山工場設計施設部部長の森勝さんに話を聞きました。本プロジェクトは森さんが計画・主導したもの。穏やかな話し声の裏に垣間見える開拓者の顔に迫ります。
■ この記事でわかること ✔ マナックは生産ラインを改修し、ファインケミカルの生産能力を増強した ✔ 工場内にゾーニングを導入し、交差汚染を防ぐ措置をとった ✔ IT化が進み、タブレットを用いた設備状況の可視化や遠隔操作が可能になった ■ おすすめ記事 ・ 自社技術・製品を開発する「湘南ラボ」が本格始動/「ニーズ把握で技術発展を」 ・ 臭素、ヨウ素の領域なら私たちの出番がある/村田社長が語るマナックの成長戦略
contents
生産能力を上げるためファインケミカル生産ラインの一部を改修
マナックは、ファインケミカル分野の中間体を受託製造しています。
ファインケミカルは、用途や目的に合わせて多品種少量で生産される、付加価値の高い化学製品です。マナックが取り扱うファインケミカルは、主に医薬品や電子材料などの中間体で、これまで数多くの製品がつくられてきました。
ところが数年前、増え続ける需要の中、ファインケミカル、特に医薬関連の生産ラインのキャパシティが限界に近づき、顧客からの新たな受託製造要求を受け入れるのが難しい状況になりました。このとき福山工場で対策を検討していたのが森さんです。
「2016年ごろには、生産能力増強のため新しい工場を丸ごと1棟建てる案が出ました。様々な制約からこの案はその後見送りになりましたが、私はそのころから工場の改修に関するアイデアを練りつづけてきました」
2019年ごろ、再び社内で生産能力増強の話が持ち上がります。今度の計画は、今あるファインケミカル工場の生産ラインの一部区画を改修するというものでした。森さんたちは生産ラインを最適化するなどして改修。新区画は2021年4月から稼働を始めました。
今回の改修で森さんたちが積極的に取り組んだのが、「交差汚染防止」と「IT化」でした。
交差汚染を防ぐため工場内をゾーニング
マナックの工場は設備ごとの区画が十分でなく、外壁のない工場も多くあります。
「ファインケミカル分野のお客さまからの設備に対する要望は年々厳しくなってきています。また、お客さまからも交差汚染の可能性のない環境で中間体を製造してほしいという要望が増えてきました。このような世の中の流れに乗り遅れると、会社として淘汰されてしまいます。そのため今回、工場に明確なゾーニングをつくって交差汚染を防ぐ計画を立てました」
IT化:モバイルデバイス導入によってどこでも設備状況が確認でき、可視化及び遠隔操作が可能に
もう1つのキーワードは「IT化」です。
職人技がキラリと光るマナックの工場ですが、近年、大手企業の工場では積極的にIT化が進められています。森さんはその流れに追いつこうと検討を続けてきました。
「いろいろな情報収集を行い、マナックの工場に導入できそうな技術を片っ端から検討しました」
今回の改修で導入したのは、Wi-Fiに接続されたタブレットです。持ち運び可能なタブレットの導入で、「設備状況の可視化」、「データの持ち運び」、「生産設備の操作」が可能になりました。
製造では、温度等のプロセスデータが重要です。
これまでマナックの工場では、工場内の決まった場所でしか製造データを見ることができませんでした。そのため、作業前にデータを確認してから作業場所に行く必要があったり、作業中にデータを確認できなかったりなど、不便な点が多かったのです。
「今回、設備稼働状況やプロセスデータを持ち運び可能なタブレットから、工場のどこにいても確認ができるようにしました。このタブレットがあればどこにいてもデータを確認できるので、無駄な動きがなくなり作業効率が格段に上がります」と森さんは言います。
省力化を考慮し、このタブレットから遠隔操作をすることもできます。さらに、監視室には固定PCも設置しているので、監視室からの遠隔操作もできます。
「持ち運び可能なタブレット導入は僕の強い思いで実行したのですが、作業員からの評判は上々でほっとしています」
森さんが考える次なるIT化計画
IT化は今回で終わりではありません。森さんは、すでに次の計画を練っています。
「今後は持ち運び可能なタブレットから操作できるセンサーを増やして、さらに省力化できるような設備にしたいと思っています。また、4月から稼働しているデータを収集しているので、将来的にはその蓄積したビッグデータの一部をAIで解析して、AIが反応を制御するような時代になるかもしれないので、そのための準備を進めています。また、操作マニュアルを紙媒体からタブレットで見る動画にすることも面白そうですね。アイデアはたくさんあります」
森さんは、IT化は人材の多様化にもつながると考えています。
「私が入社したころは、『先輩の背中を見て作業を覚えろ』と言われて、職人的なノウハウが代々受け継がれてきたのです。しかし、今はそんな時代ではありません。若い方や外国の方を含め、誰でも同じ操作ができるシステムを構築する必要があります。ITを用いて職人技を自動化することは、多様化が進むこれからの社会で非常に重要です」
マナックは時代に対応した企業でありつづける
これからの時代、古いやり方を続ける企業は生き残ることができません。
マナックでは中間体製造のさまざまなニーズに応えられるよう、時代に合わせた改革を進めつつ、質の高い製品を製造・開発していきます。