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技術・特許

5G時代に大活躍! 高周波基板への使用が期待されるポリイミドモノマー「TAHQ」とは

技術・特許, 製品

2835

【CAS番号】2770-49-2
【化学名】 5,5′-[p-フェニレンビス(オキシカルボニル)]ジ無水フタル酸
【化学式】C24H10O10

マナックは、ポリイミドと呼ばれる樹脂の原料(モノマー)を製造しています。ポリイミドは強度や耐熱性などに優れており、活躍の場はさまざまです。

今回はマナックで量産を開始したばかりのポリイミドモノマー、TAHQをご紹介します。 TAHQはIT化が進むこれからの社会で活躍が期待されるモノマーです。その秘密をひもといてみましょう。

■ この記事でわかること
✔ TAHQを用いたポリイミドは低い吸水率を持ち、高い誘電性能を発揮する 
✔ 5G時代の高周波フレキシブル基板での利用が期待されている  
✔ マナックはTAHQの量産技術を確立し、国内で唯一の商用生産者となっている 

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ポリイミドとは

ポリイミドをはじめとする樹脂は、「モノマー」と呼ばれる小さな化合物が長くつながった構造をしています。

ポリイミド樹脂の場合、以下のように「テトラカルボン酸二無水物」と「ジアミン」と呼ばれる2つのモノマーを交互に結合させてつくられます。テトラカルボン酸二無水物とジアミンにはさまざまな種類があり、使用するモノマーに応じて最終的なポリイミドの構造も変化します(下の反応式は一例です)。

TAHQはマナックの技術力の結晶

TAHQの構造は上図のとおり。中央に存在するベンゼン環と2つのエステル結合(-COO-)(上図の赤丸部分)が特徴です。

TAHQは、ヒドロキノンと呼ばれる分子1つと無水トリメリット酸と呼ばれる分子2つが結合して生成します。

上の反応式を見ると簡単そうですが、実はこの反応は一筋縄ではいきません。

例えば、ヒドロキノン1分子に対して無水トリメリット酸が1分子しか反応せず、TAHQがうまく生成しない場合があります。

また、この反応はエステル化反応(エステル結合ができる反応)です。エステル化反応には、ようやくできた生成物(今回の場合はTAHQ)の一部が反応物(今回の場合はヒドロキノンと無水トリメリット酸)に戻ってしまうという問題もあります。

TAHQを製造するには、温度やpHの調整、溶媒の選択といった反応を制御する高い技術力が必要です。マナックはすでにTAHQの量産技術を確立し、一度に数百kgのTAHQを製造できる態勢をつくりあげました。

TAHQを商用生産しているのは国内ではマナックのみ。世界でもマナック以外では1社ほどしかありません。

TAHQを用いたポリイミドは吸水率が低い

TAHQでつくったポリイミド(以後、「TAHQポリイミド」)の一番の特徴は、吸水率の低さです。

一般的なポリイミドは、吸水率は高いもので3%程度ですが、TAHQの吸水率はなんと1%未満。一般的なポリイミドの3分の1以下です。この吸水率の低さは、TAHQ中央部の特徴的な構造(ベンゼン環+エステル結合)に由来すると考えられています。

材料の吸水率は、材料自身の電気特性に影響を及ぼします。

吸水率が高いということは、例えば大気中の水分を吸収して材料の内部に水分が入りやすいということです。一般的に電子材料中に含まれる水分は、電気特性に良い影響を与えません。TAHQを用いたポリイミドは、それ自身の吸水率が低く、水分の影響を受けにくい特性を持ちます(後述の誘電率や比誘電率)。

高周波フレキシブル基板での利用が期待されるTAHQ

TAHQポリイミドの用途として期待されているのが、5G用のフレキシブルな(フィルムのように曲げられる)高周波基板です。

世の中はデジタル化が進み、通信会社はすでに5G(第5世代移動通信システム)向けのサービスを開始しています。5Gでは従来よりも高速かつ大容量の通信を行う必要があるため、信号を速く処理できる高周波基板が必要です。

高周波基板で特に重要となるのが、基板の誘電率や比誘電率です。この数値が低い方が基板の信号に与える影響を少なくできます。一般に吸水率が低い材料が誘電率や比誘電率を小さくできます。

従来のポリイミドを用いたフレキシブル基板は、吸水率が高く満足できる性能が得られないため、高周波に対応したフレキシブル基板で使用することは難しいとされています。そこで吸水率が低いTAHQを用いたポリイミドの使用が期待されているのです。

実は、誘電率や比誘電率だけでいえば、液晶ポリマーと呼ばれる材料の方がTAHQポリイミドよりも優れています。しかし、これまでポリイミドを使用していた部分を液晶ポリマーに置き換える場合、基板の製造装置などをすべて変える必要があります。一方、同じポリイミドであるTAHQを使用すれば製造インフラの大きな変更は不要と考えられます。この点もTAHQを用いたポリイミドを使用するメリットです。

TAHQの未来は明るい

TAHQを用いたポリイミドは従来のポリイミドなどに比べて値段こそ高いものの、それに見合うだけの性能を持っています。

5G時代に大活躍する誘電性能に優れたポリイミドを製造できるTAHQ。マナックは今後、TAHQの製造、販売に力を入れていきます。

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