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スタッフストーリー

予期せぬ「暴走反応」を抑える職人技/医薬品原料の開発に挑む「若き受託研究の匠」

マナックは、多くの企業から化合物の生産を委託され、研究と実験を繰り返して目的にかなった化合物をつくりだしています。研究所医薬チーム主任の宮原博昭さんは、広島県福山市にあるマナックの研究所で医薬品に使用される原料を研究するかたわら、国内屈指のヨウ素メーカーである株式会社合同資源と設立した合弁企業(ヨード・ファインケム株式会社)の工場で、化合物の量産化プロセスも担っています。化合物の生産にかける思いを聞きました。

がん関連医療用医薬品原料の合成プロセスを開発

研究所での仕事の内容を教えてください

お客様から「こんな化合物が作れないか」と要望があるので、それを可能にする製法を開発しています。当社の業務の流れの中で、比較的上流の部分だと言えます。

私は主に医薬品関連の担当なので、治験薬や医薬品の成分を合成したり、最近はがん関連の医療用医薬品の原料となる化合物の製法開発をしたりしました。実験室のビーカーの中で目的の化合物がうまくできても、工場のラインで生産できるとは限らないので、工場での検証も重要な仕事です。製造コストの想定枠内を守ることや、有毒な気体が発生しないかといった安全や環境への配慮もしています。

千葉県への出張が多いと聞きました。

1ヶ月のうち約1週間は、千葉県の九十九里海岸から少し内陸に入った千葉県長生村にある、株式会社合同資源との合弁会社の工場で、両社の強みであるヨウ素化合物の生産をしています。

急発熱を抑えた秘策とは

生産は順調でしたか。

そうでもありません。工場でヨウ素化合物の生産試験を始めたら、実験段階で予期していない化学反応が起きて、反応液が急発熱してしまいました。放っておくと沸騰して噴き出す危険性があるので、この急発熱を抑える方法を検討しました。

どんな対策を?

原料と触媒を混ぜると、中間体を経由して、目的物と副生成物の「酸」が発生します。急発熱の原因究明の過程で、この「酸」は中間体が目的物へ変換するために必要で、さらに一定濃度に達しないと期待する化学変化が起こらないことが解りました。
暴走して急発熱したのは、「酸」が一定濃度に達する前に、中間体がたまり過ぎてしまうことが原因でした。

これまでの経験を振り返って、原料を全部最初に入れるのではなく、ある原料の一部だけ先に入れてみました。原料を入れる量とタイミングをずらすことで、「酸」を先につくるという考え方です。この方法で急発熱を抑え、コントロールできるようになりました。

職人的な技術ですね。

反応を起こすための触媒が、目的の化合物ができた後に余計な反応を起こして困ったこともありました。水を入れるとその触媒は失活するのですが、水と反応すると有毒ガスが発生してしまう。そのときは、研究所スタッフと話し合って、水以外の物質を入れることで解決しました。マナックはヨウ素や臭素の化合物に関しては、技術と知識を持っているので、先輩たちが引き継いできた職人技に助けられることもあります。

存在感増す日本の受託メーカー

要望を受けてから実際に工業生産が始まるまでにどれぐらいの期間がかかりますか。

製品によってまちまちです。いま私が担当している案件でいうと、最初に話があったのが2014年で2年後に生産プロセスが確立し、工場生産が始まったのが2019年なので5年間かかりました。医薬品は、依頼元の企業が製品を市場に投入するタイミングが重要なので、開発期限を明示されることもあります。医薬品の原材料がつくれなければ、多くの患者さんの健康や命に関わります。

責任重大ですね。

製薬会社側も、私たちを含めて複数の医薬品原料メーカーを確保しているようですが、外国の原料メーカーの場合は、突然何かの理由で原料供給がストップするカントリーリスクがあるようで、日本メーカーの存在感が増していると感じます。医薬品の原料を変えないといけなくなると、国に申請をして承認を受けなければならないという事態にも発展してしまいますし。

マナックにしかつくれない高付加価値材を追究

やりがいがありますね。

つくった化合物が、がん関連の医療用医薬品の原料として、多くの患者さんを助けることにつながるのはうれしいですね。化学メーカーは直接的に消費者の手に渡る最終製品はつくっていませんが、私たちが作る原料がなければ、世の中の多くの製品は出来上がりません。裏方ではありますが、確実に仕事を通じて世の中の役に立てているという実感はあります。

大学時代はどの分野の勉強をしていたんですか。

医薬品とは関係ありませんが、有機合成分野の基礎研究をしていました。箱のような構造をした化合物が、光を当てたり電流を流したりしたときに、どう変化するかといった実験を繰り返していました。

これからの目標を教えてください。

ヨウ素や臭素など取り扱いに危険が伴う物質に関するノウハウが社内に蓄積しています。つくる化合物の中には不安定なものもありますが、そうした物質も安定して取り出す方法を独自に開発してきました。蓄積された技術を活かして、さらに付加価値が高い化合物を自分のアイデアで生み出してみたいです。

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