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技術・特許

ジヨードメタン活用の新ビジネス:独自のシクロプロパン化反応で原薬メーカーをターゲットにSDGs実現を狙う

技術・特許, 製品

1458

【CAS No.】75-11-6
【化学名】ジヨードメタン
【化学式】CH2I2

マナックは受託開発に加えて、自社技術の開発にも積極的に取り組んでいます。これまでに培ってきた技術的なノウハウと市場の動向とを組み合わせ、世の中に新たな価値を提供するためです。

自社技術に取り組む中で、2018年度に技術開発を開始し、2019年度に他社へのプレゼンテーションをはじめたばかりの新技術があります。この技術の開発管理を担当している研究所医薬チームリーダーの竹田宏紀さんにお話を聞きました。

■ この記事でわかること
✔ マナックは自社技術の開発に積極的に取り組んでいる。 
✔ 原薬メーカーをターゲットに、シクロプロパン化反応の一括請負モデルを構築した
✔ ヨウ素のリサイクルをパートナー企業と連携して実施し、持続可能性を考慮した

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はじまりは自社製品であるジヨードメタン

マナックは以前から、ジヨードメタンと呼ばれる化合物を製造・販売していました。ジヨードメタンはヨウ素(I)を2つ含む以下のような化合物です。

「自社製品のジヨードメタンを使った新たな技術を検討するにあたって、ジヨードメタンを必要とする分野を調査していました。その過程で着目したのが、シクロプロパン化と呼ばれる反応です」と竹田さんは言います。

ジヨードメタンを別の化合物と反応させると、その化合物中にシクロプロパンと呼ばれる三角形のような構造(シクロプロパン骨格)ができます。これがシクロプロパン化反応です。

シクロプロパン骨格を含む化合物をよく使う分野では、シクロプロパン化で必要なジヨードメタンの需要もあるはずです。

ターゲットは原薬メーカー

竹田さんたちが市場調査を進めた結果、シクロプロパン骨格は医薬品の原薬(有効成分)中によくみられることがわかりました。

注)Saxagliptinは糖尿病、Ticagrelorは心筋梗塞、LedipasvirはC型肝炎治療薬の原薬として、それぞれ使用されている。

一般に医薬品の原薬は、標的タンパク質の特定部分に結合することで効果を発揮します。

原薬を標的タンパク質にうまく結合させるには、原薬の構造を適切に調節しなければいけません。原薬中にシクロプロパン骨格をつくることで、この構造調節がしやすくなります。また、シクロプロパン骨格は小さい構造であるので、原薬がタンパク質に結合するときの邪魔にもなりません。原薬中にシクロプロパン骨格をつくることには多くのメリットがあるのです。竹田さんらはここに着目しました。

「原薬メーカーは、シクロプロパン骨格をつくるためにシクロプロパン化反応を行っているはずなので、原薬メーカーを本技術のメインターゲットに定めました。ジヨードメタンを供給するだけでなく、シクロプロパン化反応までを一括して請け負うというビジネスモデルを構築しました」

開発管理を担当する竹田さん

反応で発生したヨウ素はパートナー企業との連携で再利用

この話にはもう1つ大きなポイントがあります。それは、シクロプロパン化反応で発生するヨウ素のリサイクルです。

ジヨードメタンを使ってシクロプロパン化反応を行うと、ジヨードメタンからヨウ素が外れます。ヨウ素は最終的にヨウ化亜鉛といった形で廃液中に移行しますが、この廃液をどう扱うかが重要だと竹田さんは言います。

「ヨウ素を含む廃液は、廃棄コストがかかってしまいます。さらに、ケミカルリサイクルや持続可能な開発目標(SDGs)が叫ばれている昨今では、モノをつくって残りを捨てるという方法は望ましくありません。この新技術をアピールするにあたり、ヨウ素のリサイクルは避けて通れない課題でした」

マナックがヨウ素分野で提携しているパートナー企業の合同資源は、廃液中のヨウ素をリサイクルする独自の技術を持っています。今回、その技術を活かし、シクロプロパン化で生成した廃液からのヨウ素回収までを、このパートナー企業との連携により一括して請け負うことにしました。

「ただし、廃液中のヨウ素濃度が薄すぎると回収はできませんし、廃液中に含めてはいけない物質もあります。シクロプロパン化反応における原料の量や原料を加えるタイミング、溶媒の種類などを適切に調整することで、ヨウ素回収に対応できる廃液をつくることが必要です。ここにも私たちが蓄積してきたノウハウが活かされています」

こうした課題を克服し、回収したヨウ素は新たなヨウ素化合物の製造に使われます。

シーズ発信を推奨する研究環境

受託開発と自社技術開発の両方を行えることがマナックならではの魅力だと、竹田さんは言います。

「受託開発が多い会社ですが、社内では新しい技術アイデアの提案も推奨しています。今回の技術も、ある研究員のアイデアから始まったものです。若い人には、普段から情報に対してアンテナを張っておくよう指導しています」

社内では、次の新しい技術のアイデアが芽生えています。

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