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技術・特許

カルボン酸と関連化合物のヨウ素化:脂肪族化合物のヨウ素化反応⑤:臭素化・ヨウ素化反応解説シリーズ 22

これまで数回にわたり、単体ヨウ素を用いた脂肪族化合物のヨウ素化反応を解説してきた本シリーズ。いよいよ今回で、脂肪族化合物の解説は最後となります。

最後に取り上げるのは、カルボン酸と関連化合物(エステルやハロゲン化アシルなど)のヨウ素化です。

カルボン酸のヨウ素化は、塩素化や臭素化とは異なり容易には進行しません。しかしその代わりに、ヨウ素化に適したさまざまな方法が提案されています。これらの方法に関する知識は、ヨウ素化反応を設計する上で役立つことでしょう。

反応の特徴や反応例をくわしく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

単体ヨウ素による脂肪族化合物のヨウ素化反応:カルボン酸と関連化合物のヨウ素化

さまざまなヨウ素化法が提案されている

ヨウ素を低級カルボン酸に溶かすと、次亜ヨウ素酸アシルが発生します。しかし、塩素や臭素の場合とは異なり、この状態で長く放置しても炭素鎖はヨウ素化されません。

しかし、これに代わるヨウ素化法がいくつか提案されています。各方法の詳細は以下の通りです。

銅塩を用いる方法

Cu(OCOCH3)2やCuCl-CuCl2(1:1)の存在下でカルボン酸をヨウ素と加熱すると、α-ヨードカルボン酸が好収率で得られます2)

クロロスルホン酸を用いる方法

クロロスルホン酸中でヨウ素とカルボン酸を加熱すると、α-ヨードカルボン酸が得られます3)

α位が分岐構造を持つカルボン酸の場合は収率が低くなることから、この反応は以下のように、ケテンの発生とそれに対するヨウ素の付加という2段階で進むと考えられています。

塩化チオニルを用いる方法(アシルクロリドのヨウ素化)

カルボン酸を塩化チオニル中でヨウ素と加熱すると、カルボン酸誘導体であるアシルクロリドがヨウ素化されたα-ヨードアシルクロリドが得られます4)

リチウムジアルキルアミドを用いる方法(エステルのヨウ素化)

カルボン酸誘導体の一種、エステル。このエステルをリチウムジアルキルアミドでエステルエノラートに変えた後にヨウ素で処理すると、α-ヨードエステルが得られます5)
これも、カルボン酸の間接的なヨウ素化法とみなされています。

【コラム】生物にとって有毒!ヨード酢酸が及ぼす影響とは

酢酸のヨウ化物であるヨード酢酸は、さまざまな生物に対して毒性を示すことが知られています。できれば関わりたくない化合物ですが、実は、私たちはヨード酢酸を日常的に摂取している可能性があるのです。一体どういうことなのでしょうか?

私たちが毎日飲んでいる、飲料水。その製造施設では、塩素などの消毒剤が広く使用されています。実はこれらの消毒剤は、水中の別の物質と反応して、消毒副生成物(disinfection byproducts、DBP)と呼ばれる化合物を生成します。DBPは低い濃度ではあるものの飲料水中にも残っているため、私たちは普段からDBPを口にしていると考えられています。

このDBPの中でも、細胞毒性や遺伝毒性が高いとして特に注目されているのが、冒頭で話題に出したヨード酢酸なのです。

ヨード酢酸の毒性は、多くの研究で報告されています。例えばGonsioroskiらは、ヨード酢酸によってマウス卵巣細胞の遺伝子発現が変化する6)など、生殖機能とのさまざまな関連性を明らかにしています。

安全な水を飲むために消毒は必須であり、DBPの生成量をゼロにすることはできません。しかし現在、工程や処理内容を見直すなどしてDBPの量を低減させる工夫がなされています。DBPとうまく「付き合う」にはどうすればいいか、みなさまもぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1) 鈴木仁美 監修、マナック(株)研究所 著、「臭素およびヨウ素化合物の有機合成 試薬と合成法」、丸善出版
2) Horiuchi, C. A., Satoh, J. Y. Chem. Lett., 1984, 1509.
3) Ogata, Y., Watanabe, S. J. Org. Chem., 1980, 45, 2831.
4) Harpp, D. N., Bao, L. Q. et al. J. Org. Chem., 1975, 40, 3420.
5) Rathke, M. W., Lindert, A. Tetrahedron Lett., 1971, 3995.
6) Gonsioroski, A., Laws, M. et al. J. Environ. Sci,, 2022, 117, 46.

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