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技術・特許

【特許】必要な化合物を選択的に製造!
/ヨードアニリン異性体混合物の精製を
可能にした「ある化学反応」とは

技術・特許, 製品

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【CAS No.】626-01-7
【化学名】3-ヨードアニリン
【化学式】C6H6IN

私たちの身の回りにある家電製品や医薬品などには、さまざまな化合物(中間体)が使われています。これらの中間体はテレビなどの家電製品を燃えにくくしたり、医薬品の効果を出したりするために必要不可欠です。

家電製品と医薬品には異なる機能が求められるため、使われる中間体の構造も当然異なります。そのため中間体製造業者は、指定された構造の中間体を正確につくる必要があるのです。

しかし、中間体の製造過程では、目的の中間体と似た構造をもつ化合物が混ざり込んでしまう場合があります。この場合、どのようにして目的の中間体だけを取り出せばよいのでしょうか。今回ご紹介する特許は、このような「異性体混合物の精製」に関する技術です。

異性体とは?

例えばブロックを組み立てる場合、同じブロックを使ったとしても組み立て方を変えればさまざまな構造をつくることができますよね。化学の世界でつくられる化合物も同じです。化合物は原子を組み合わせてつくられており、組み合わせ方を変えることで同じ原子から異なる化合物をつくり出すことができます。このように、同じ原子からつくられているけれども、構造が異なる化合物を「異性体(構造異性体)」と呼びます。

異性体同士は構造が似ているため、目的の中間体に異性体が存在する場合、目的の中間体とその異性体が同時につくられてしまうことがあるのです。

3-ヨードアニリンをつくるための課題

今回ご紹介する特許は、「ヨードアニリン異性体混合物から3-ヨードアニリンを精製する方法」に関する発明です。

ベンゼン環にアミノ基(-NH2)が結合した化合物であるアニリンは、染料やゴム、医薬品などに使われるポピュラーな化合物です。そのアニリンにヨウ素が結合したヨードアニリンには、NH2基とヨウ素との位置関係によって以下のような3種類の異性体が存在します。3-ヨードアニリンを製造すると、異性体である2-ヨードアニリンと4-ヨードアニリンも数%程度つくられてしまうため、その異性体混合物から3-ヨードアニリンのみを取り出す必要があるのです。

「最初から3-ヨードアニリンだけをより高収率でつくる方法はないのか」と思われるかもしれません。実はそのような方法もあるのですが、コストや生産性の問題で量産が難しいのです。そのため本特許では、安価な方法でヨードアニリン異性体混合物をつくり、そこから3-ヨードアニリンのみを取り出す方法がとられました。

混合物から目的の化合物を精製するには、一般に再結晶(粗結晶を一度溶解させた後、溶液を冷却して純粋な結晶を析出させる方法)や蒸留(沸点の差を利用して液体混合物を精製する方法)などの方法がとられます。しかし、ヨードアニリンは常温で液体であるため再結晶はできず、熱に弱いため蒸留も容易ではありません。どうすれば精製が可能となるのか、検討が行われました。

特許出願の中心メンバーである宮原さん

精製を可能にした「ある化学反応」

今回開発されたのは、「ヨードアニリン異性体混合物に酸を加えてヨードアニリンを塩(えん)の形にし、塩を含む溶液を再結晶することで3-ヨードアニリンの塩を選択的に析出させる」という方法です。

ヨードアニリン異性体混合物に塩酸を加えると、各ヨードアニリンは以下のような「ヨードアニリン塩酸塩」という塩になります。塩とはいわゆる「しお(塩化ナトリウム)」のようなもので、常温で固体の結晶です。つまり、そのままの状態では液体で再結晶ができないヨードアニリンを、固体である塩に変換することで、再結晶による精製を可能にしたのです。これが本特許の「新規性=肝」だといえるでしょう。

異性体混合物に塩酸を加えた時点では、各異性体の塩酸塩は溶液に溶けた状態です。この溶液を0~5℃程度にまで冷却すると、含有量の多い3-ヨードアニリン塩酸塩が選択的に再結晶します。実験の結果、99%以上という十分な純度の3-ヨードアニリン塩酸塩が得られました。再結晶で得られた3-ヨードアニリン塩酸塩は、塩基で処理して元の3-ヨードアニリンに戻すことが可能です。

この方法により、3-ヨードアニリンを高純度かつ安価に得ることに成功したのです。

きっかけは海外医薬品メーカーからの製造受託

本特許出願の中心メンバーは、研究所医薬チーム主任の宮原博昭(みやはら・ひろあき)さんです。海外の医薬品メーカーから3-ヨードアニリンの製造を受託した際に、今回の精製方法を開発しました。

「自分が考えた精製方法には特許性があると踏んだ宮原さんは、従来技術の調査から特許明細書(発明内容を記載した資料)の作成までを自身で担当します。2012年に本特許を出願し、その後無事に特許が成立しました。

「特許の出願や権利化は企業にとって非常に重要だ」と述べる宮原さん。今後も多くの特許出願に貢献することでしょう。

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