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技術・特許

さまざまな分野で大活躍! マナックが製造する3つのポリイミドモノマー

技術・特許, 製品

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ODPA-C
【CAS No.】1823-59-2
【化学名】 4,4′-オキシジフタル酸無水物
【化学式】C16H6O7

PEPA
【CAS No.】119389-05-8
【化学名】4-フェニルエチニルフタル酸無水物
【化学式】C16H8O3

TAHQ
【CAS No.】2770-49-2
【化学名】 5,5′-[p-フェニレンビス(オキシカルボニル)]ジ無水フタル酸
【化学式】C24H10O10

マナックは、ポリイミドと呼ばれる樹脂の原料(モノマー)を製造しています。ポリイミドは強度や耐熱性などに優れており、活躍の場はさまざまです。

マナックが製造・販売している3種類のポリイミドモノマーは、どのモノマーも製造が難しく、なんと国内で製造しているのはマナックのみ。「技術力の結晶」ともいえるこれらのポリイミドモノマーは一体どんな化合物なのでしょうか?

■ この記事でわかること
✔ マナックは、日本で唯一3種類のポリイミドモノマーを製造している  
✔ ODPA-Cは、光を通しやすく半導体の保護膜に使用される 
✔ TAHQポリイミドは5G時代の高周波基板に重要な役割を果たす  

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ポリイミドとは

ポリイミドをはじめとする樹脂は、「モノマー」と呼ばれる小さな化合物が長くつながった構造をしています。

ポリイミド樹脂の場合、以下のように「テトラカルボン酸二無水物」と「ジアミン」と呼ばれる2つのモノマーを交互に結合させてつくられます。テトラカルボン酸二無水物とジアミンにはさまざまな種類があり、使用するモノマーに応じて最終的なポリイミドの構造も変化します(下の反応式は一例です)。

マナックが製造・販売している3種類のポリイミドモノマーの構造や特徴、用途などをご紹介します。

半導体分野で大活躍! 30年以上の歴史をもつ「ODPA-C」

ODPA-Cは30年以上前から製造を続けているポリイミドモノマーで、今回ご紹介するモノマーの中では一番の古株です。

ODPA-Cの特徴は、中央の酸素原子(O)を介した結合部分(上図の赤丸部分)です。この結合はエーテル結合と呼ばれます。

普通のポリイミドはこげ茶色ですが、ODPA-Cでつくられたポリイミド(以後、「ODPA-Cポリイミド」)はエーテル結合が存在するので、少し薄い色になります。色を薄くすることによって、普通のポリイミドよりも光を通しやすくなるのです。

ODPA-Cポリイミドの主な活躍の場は、半導体回路の保護膜です。

パソコンなどの電子機器で使用する半導体回路をつくる際には、ベースとなる基材上にさまざまな材料を層として積み重ねたり、層の狙った箇所だけを削ったりします。その後、回路の保護や平坦化のため回路の一番上を保護膜と呼ばれる膜で覆う必要があります。この保護膜として、光を通しやすいODPA-Cポリイミドが使われるのです。

では、なぜ保護膜は光を通しやすい必要があるのでしょうか?

電子機器を製造する際には、ある半導体回路を他の回路と接続する場面が多くあります。このとき保護膜に配線用の穴を開ける必要がありますが、膜の一部を機械的に除去するのは非常に難しい作業です。

感光性(光を当てると構造が変化する性質)を持つODPA-Cポリイミドを保護膜に使っておけば、部分的に光を照射するなど簡単な作業で保護膜に精密な穴を開けることができます。この際、光を保護膜の奥まで到達させないと穴の形を正確に制御できないため、光を通しやすいODPA-Cポリイミドが保護膜として重宝されるのです。

また、ODPA-Cの構造を少し非対称にしたポリイミドモノマーは宇宙帆船イカロスの帆にも使用されています。

網目構造の形成がカギ! 超高耐熱用途に使用される「PEPA」

PEPAは上のような構造のモノマーです。特徴は、分子中の三重結合(上図の赤丸部分)です。

PEPA以外のほとんどのポリイミドモノマーには、他のモノマーとの結合箇所が2箇所しかありません。例えば、ODPA-Cの場合は下図で示す2箇所です。このようなモノマーを使用すると、下図のように分岐のない直線状のポリイミドができます。

一方、PEPAを使用すると網目状のポリイミドが生成します。以下の図に示すように、PEPAには他のモノマーとの結合箇所が少なくとも3箇所あるためです。

網目状のポリイミドには直線状のポリイミドよりも熱に強い性質があります。そのため、PEPAでつくられたポリイミドは「超高耐熱材料」としてさまざまな分野で使用されています。なんと航空機の排気部品にも使われています。

5G時代に大活躍! 吸水性の低さと熱膨張係数の低さが特徴の「TAHQ」 

TAHQは上のような構造のモノマーです。約20年前から製造しています。

TAHQでつくられたポリイミド(以後、「TAHQポリイミド」)の一番の特徴は、吸水率の低さです。一般的なポリイミドは吸水率が高いもので3%程度ですが、TAHQポリイミドの吸水率はなんと1%未満。この吸水率の低さは、TAHQ中央のベンゼン環とエステル結合(-COO-)部分(上図の赤丸部分)に由来すると考えられています。

このTAHQポリイミドの用途として、最近になって5G用高周波基板での利用が期待されています。

高周波基板は信号を早く伝達する必要があります。しかし、基板材料の吸水性が高いと基板がたくさん水を吸収してしまうため、信号伝達に悪影響を与えてしまいます。これを避けるため、高周波基板には吸水性が低いTAHQポリイミドのような材料が求められているのです。

世の中のデジタル化は今後ますます進むばかりです。5Gの世界で大きな役割を果たすTAHQは今後注目を浴びそうです。

ポリイミド市場はこれからも拡大していく

半導体、耐熱部品、高周波基板など、マナックのポリイミドモノマーはさまざまな分野で活躍しています。特にTAHQに関しては、通信技術の発展にともない今後さらに需要が拡大するでしょう。

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