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技術・特許

中分子医薬領域への挑戦/ペプチド合成の難題をクリアする脱水縮合剤の研究最前線

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近年、ペプチド医薬を中心とした中分子医薬に注目が集まっています。国内でも大手医薬品メーカーが相次いで中分子医薬への参入を表明するなか、マナックも、これまで培ってきた低分子合成やハロゲンの技術をもとに、ペプチド医薬の製造に必要な脱水縮合剤の研究に取り組んでいます。湘南ラボで研究をしている福田賢也さんに話を聞きました。

■ この記事でわかること
✔ ペプチド医薬は低分子薬と抗体医薬の利点を持ち、成長が期待されている 
✔ マナックは低分子合成技術を活かし、ペプチド医薬用の脱水縮合剤を研究している 
✔ 福田さんは、ペプチド合成における3つの課題を克服するために新たな試みを行っている 

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中分子医薬の中でもペプチド医薬がアツい

従来の医薬品は、分子量の少ない低分子薬と高分子薬である抗体医薬に分類されます。中分子医薬は、低分子薬と抗体医薬の中間くらいの分子量を持った医薬品です。

低分子薬は、分子量が小さいため細胞内に入り込むことが可能で、細かな標的を狙うのに適していて、経口投与が可能で安く製造できる点はメリットです。一方で、標的への特異性が低いため副作用が起こりやすい点がデメリットとなります。

抗体医薬は、薬としての効果が高く、標的への特異性が強く副作用が起きにくい点がメリットです。一方で、分子量が大きいため、細胞内に入ることはできません。さらに、化学合成で生産できないため、製造コストが高い点や経口投与ができない点がデメリットです。

注目されている中分子医薬は、低分子薬と抗体医薬のバランスを取ったもので、特異性が高く副作用が少ない点や、細胞内に入り込める点、化学合成が可能で製造コストが安く、経口投与が可能な点がメリットです。低分子と抗体医薬の「いいとこ取り」になるのです。

中分子医薬は、主にペプチド医薬と核酸医薬に分類できます。国内大手医薬品メーカーは、特にペプチド医薬品の開発に積極的に取り組んでおり、今後の成長が期待されている領域です。

ペプチド合成領域の研究にマナックが取り組む理由

今後成長が期待される中分子医薬・ペプチド医薬の領域にマナックが取り組むのは、ペプチド合成にマナックがこれまで培ってきた低分子合成の技術を活かせると考えたからです。

ペプチド合成を温和な反応条件下で行うためには、脱水縮合剤が必要不可欠です。さまざまな種類の脱水縮合剤が開発されてきましたが、中にはハロゲン原子を有するものもあります。

福田さんは、「ハロゲンは、環境負荷などネガティブなイメージがあり、医薬品の製造途中でハロゲン原子を含む脱水縮合剤を用いることはこれまで敬遠されがちでした。また他にさまざまな脱水縮合剤が開発されていることもあり、ハロゲン原子を有する脱水縮合剤の研究は十分にされていません」と話し、こう続けます。

「マナックは、これまでの開発経験からハロゲンの扱いに長けているので、プロセス化学を駆使してより低コストでこれらの反応剤を提供できるでしょう。既存の脱水縮合剤と比較して遜色無い反応剤を開発できれば、ペプチド医薬の領域に参入できると考えています」

新たな脱水縮合剤を生み出すための3つの難題

新たな脱水縮合剤を生み出すためには、ペプチド合成における次の3つの難題をクリアする必要があります。福田さんは「すでに多くの種類の構造を試しています。最近になって、オリジナリティがあるユニークな構造が作れるようになってきたので、これをうまく改良して難題をクリアできる新しい脱水縮合剤を開発していきたいです」と話します。

1 反応一回あたりの収率

ペプチド医薬品は、数十程度のアミノ酸を結合させた構造なので、その数の分だけ脱水縮合反応を繰り返す必要があります。一回の反応における狙いの生成物の収率が低い場合、それを繰り返すことで最終的な収率は大きく悪化してしまいます。

一回あたりの反応で、本来の狙いとは異なる副生成物を発生させずに、狙いの化合物を高い純度で反応させられるかが重要なポイントです。

2 立体異性体の片方しか医薬品として使えない

キラリティ(右手と左手のように重ね合わせができない特性)を持つ化合物において、通常は片方の異性体しか医薬品としての効能を発揮しません。

医薬品としての性質を持っている側の化合物が失われてしまうエピメリ化(エピ化)を可能な限り抑制できるような反応を実施することが重要で、難しいポイントです。

3 既存の脱水縮合剤の課題を解決

すでにさまざまな種類の脱水縮合剤が世の中にあって使用されているのは前述の通りですが、それらに課題が全くないわけではありません。

それら既存品との差別化のため、例えば、より低毒性を実現したり、反応後の脱水縮合剤由来の副生成物の除去性をより向上させたりするなどして、本来の脱水縮合剤の機能+α部分を低コストで実現するという難題があります。

東京生まれ横浜育ちで東京工業大学からマナックへ

福田さんは、東京生まれ横浜育ちで、東京工業大学理学部に入学し、大学院を卒業しています。入学時から有機化学に興味があったわけではなく、入学後にさまざまな授業を受ける中で有機化学に興味を持って化学科へ進学し、オーソドックスな有機合成ができる研究室を選びました。

福田さんはマナックに入社した経緯について、「就職活動の当初は大企業ばかり見ていたので、大手就職情報サイトでマナックの名前を目にした記憶はありましたが、受けるつもりはありませんでした。就職活動を進める中でエージェントに紹介されてから初めて、マナックについてしっかり調べ、有機合成がバリバリできる面白そうな会社だなと思いました」と話します。

「大学時代の研究室のメンバーと話をしても、就職してから仕事で有機合成を行っている人はそれほど多くありません。私は、好きな有機合成の仕事をがっつりやれていますし、自分が培ってきた経験を活かせているので、マナックに入ってよかったと思います」

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